俺と妻と傷口
その日から、ほぼ毎日のように華恋は城野の元に通うようになった。

朝、俺を送り出した後、病院に行き夜遅くに帰ってくる。

そんな生活が、半年も続いた。
幸い、脳には異常なかったが華恋ができる限り看病したいと言って………


俺は我慢の限界を越えていた。

「ねぇ、もういいじゃねーの?看病行かなくて……」
「まだ退院して、一ヶ月も経ってないからもう少し……。
お願い…奏多」
「なんの為に…?」
「だから私のせいで、怪我を………」
「もう退院したんだから、いいじゃん!もう我慢できねぇよ!」
「駄々をこねないで?ほんとにもうすぐだから」
「子ども扱いすんなよ!」
「子どもみたいなこと、奏多が言うからでしょ?」

ここのところ、毎朝こんな喧嘩をしている。
とにかく不安で、苦しかった。

「そんなに怪我したことが偉いのかよ……!?」
「は?」
「確かに華恋を守って、怪我したのはわかる。だからってここまでする必要ないだろ!?」
「だからお願いしてるでしょ?」
「まさかこのまま、俺と別れて城野のとこに行かないよな…!?」

「そんな訳ないでしょ?」

「……傷口…俺にもあるじゃん…!それと同じなの?」
「は?訳わからないこと言わないで…!」


「華恋が俺と付き合ってくれたのも、結婚してくれたのも、傷口のおかげなの…?」

「は?冗談やめてよ…!」

どこかで、そうじゃないかと思っていた。
俺が華恋を守って、傷をおったから。
責任を感じて、俺を受け入れてくれたんじゃないかと………
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