俺と妻と傷口
愛情
次の日、城野の家に二人で行った。
城野にちゃんと話して、わかってもらいたくて……

「どうぞ?」

お茶を出してくれた、城野。
「城野さん、私………」
「もういいよ?来てくんなくて………」
城野は俺達が訪ねたことで、なにかを察したのかこう言った。

「え…?」
「もうこれ以上…華恋ちゃんの顔みるの、辛いし………」
城野の顔がせつなそうに歪んでいた。

「正直…華恋ちゃんのこと…このまま奪えたらなんてバカなこと思ってた。
でも君があまりにも辛そうだから、思ったんだ。
あの言葉の意味、やっとわかったよ!」
「え?」
「“私は城野さんがダメなんじゃない!”“他の誰でもない、奏多がいい”」
「城野さん……」
「社長。
華恋ちゃん、この半年…どんなだったか教えましょうか?」
「は?聞きたくねぇよ!」

どうせ、悲しそうにとか辛そうにとかだろ!?
「奏多…ごめんね……。また奏多を傷つけた……」
「は?」
「俺の看病してるはずなのに…華恋ちゃん、社長のことばっかでしたよ?
きっと本人も気づかない内に、俺の看病が義務化になってたんじゃないかな?
責任みたいな?」
「城野さん…私……」
「別に責めたいんじゃない!
ただそれくらい、君は社長だけなんだよね?
この半年で、君の気持ちが痛い程わかったよ。
だからもう十分だよ?」

「城野さん、ほんとにごめんなさい。
助けてくれて、ありがとうございました!」
「フフ…いいえ。お詫びはあのキスで(笑)!」

「キス!?」
「え?あれは……!」
「もともと俺が我慢できなくて、キスしたのが発端だし」
「はぁぁ?」
「もういいでしょ?社長!
これでおしまい!!」

「あのなぁ……」
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