俺と妻と傷口
「ただいま~華恋~」
玄関を開け、声をかけると奥からパタパタと音がして、
「お帰り~」
と華恋が小走りに近づいてきた。その姿がとても可愛らしい。
「お疲れ様」
「ん」
「ん?」
「キス」
「フフ…。
ンン……」
「華恋、可愛い…。
その顔、堪らない……」
「もう///ごはん出来てるよ?早く食べよ?」
そう言いながら、中に入る。

「うーん。先にギュってしたい」
「え?」
華恋を後ろから抱き締めた。
「んー。華恋いい匂いするー」
「そう?」
「うん、甘い匂いがする……」
「そうかな?
でも奏多、もう離して?ごはん冷めちゃうよ…?」
「うん…」
「それに……」
「ん?」
「香水の匂いする……これって女性物だよね?」
「え?マジで!?」
バッと離れ、自分のスーツを嗅いだ。

「うん…なんか……。
ヤキモチ妬いちゃう……」
最後の方が聞こえなかった。
「何?」
「なんでもない!!早く食べよ?」
「うん…ちょっと着替えてくる!」

スーツを脱いで、もう一度嗅いでみた。
微かにアイツ(先宮)の香水の匂いがした。
すぐに、消臭スプレーを思いきりかけた。

「華恋、お待たせ」
「うん、食べよ」
「いただきまーす」
「………」
「……ん。旨い!
…って、どうした?」
俺は華恋の視線を感じ、華恋に向き直り聞いてみる。

「香水の匂いが、移るってどんなシチュエーション?」
「は?」
華恋、機嫌が悪い?

「どんなって?」
「その香水の香り、先宮さんだよね?」
「は?」
「わかるよ。それ自分用に調合したって聞いたことあるの。
まさか、奏多━━━!」
華恋の鋭い目が刺さった。

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