癒しの君と炎の王 2~炎の王は癒しの娘をさらに溺愛中~
バイオリンの音色がホールいっぱいに響き渡り、二組は同時に踊り出した。

しかし、初心者のソフィアはいきなりロエルの靴を踏んでしまった。

「ごっ、ごめんなさいっ!」

慌ててソフィアはロエルから体を離そうとしたが、ロエルは逆に腕に力を入れて、さらにソフィアをぐいっと自分に引き寄せた。

驚くソフィアに、再び耳元で

「大丈夫。いくら踏んでも構わないから、止まらずに踊って。」

と、囁いた。ソフィアは赤面しながらも、

「はい…。」

と、答えた。

再び踊り始めると、またソフィアが足を踏んでしまった。すると、今度はソフィアが謝るよりも前に、ロエルが、

「気にしないで。ほら、そんな顔しないで楽しそうにして。」

と、優しく微笑んだ。

ソフィアはこれではいけないと思い、高鳴る胸を抑え、ドキドキしながらも、出来るだけダンスに集中するように意識を向けた。

一方、ハリスとアンの二人はというと、話をする余裕があるほど、二人とも息がぴったりと合っていた。

「上手いね。さすが、次期王妃付きの侍女様だ。ダンスはどこで?」

アンはハリスの言葉が本音なのか嫌味なのかが分からず、少し間を置いてから恥ずかしそうに、

「…見よう見まねです。舞踏会でお給仕の仕事を何度もしていたので…。その時に覚えました。」

「それはすごい!見ただけで覚えられるなんて!スローワルツの他には?」

「なぜ質問ばかりなさるのですか?」

「アンの事が気になるからだよ。ねえ、ウインナワルツも踊れる?」

「秘密です。」

「知りたいなぁ。」

などと、話している。

二組が踊る中、いつの間にか、マイティの横にはアルバートが来ていた。

アルバートは小声で、マイティに向かって、

「誠に申し訳ありません。」

と、謝ると、

「いえ、陛下の方が私よりも教えるのが上手なようですね。ほら、みんな笑顔になっております。私はお邪魔なようですね。」

と、小さく笑った。

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