王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
男の子は兄にお菓子をとられた上に置き去りにされた、と訴えた。
どうやら迷子にでもなったらしい。
「そっか」
クママルは頷きながら、手にしてたお菓子をハンカチでくるみ、男の子のベルトに結うと上着で隠した。
「お兄ちゃんには見つからないように、ナイショだよ」
口に人差し指を立ててウインクしたクママルは、そのまま男の子の手を引いた。
「一緒にお父さんかお母さんを捜そっか」
「……うん」
男の子はまだ泣いてはいたものの、すっかり落ち着いた様子だ。
(まったくこれだから放っておけないんだ)
メイフュはまた内心でため息をつく。
クママルは単純な上にお人好し過ぎるのだ。
あっさり人を信じて誰にでも分け隔てなく優しく、それゆえに騙されたりひどい目に遭う。
以前は一緒に泊まった旅人に所持金ごとごっそり荷物を盗まれた。
殺されかけた事もある。
それでも。
クママルは人を信じるのを止めようとしない。
底抜けのお人好しなのだ。
だから。
メイフュは自分が着いていなければ、と思う。
クロロルでも護衛は出来るが、猫である以上限界はある。