王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
「ああ、どうもすいません!」
母親らしき30代ほどの女性が駆け寄ってきたのは、捜し始めて1時間ほど経って。
淡いブルーの髪を後ろで束ね、すこし面窶れして着ている服も継ぎ接ぎを当て色褪せている。
裕福そうに見えないその女性は、クママルに何度も何度も頭を下げた。
「申し訳ありません! うちの子がとんだご迷惑をおかけしてしまい……どうもありがとうございます。ほら、キュリオもお礼を言って!」
男の子は母親に無理やり頭を下げられ、なぜかムスッとしている。
「いいんですよ! 困った時はお互いさまですから。
あ、でも。お兄ちゃんはいいんですか? キュリオくんはお兄ちゃんといたそうですけど」
クママルがそう言うと、母親は首を傾げる。
「……わたしの息子はキュリオ1人だけですが……」
そして、母親はハッと気がついた様で、キュリオの手を引くとクママル達を案内する。
「うちはすぐそこなんです。お時間がありましたらお礼にお茶でもいかがですか? パンプキンパイが焼きあがっておりますので」
「はい! 喜んで……OUCH!」
クママルがあまりに早く即答したからか、肩に乗っていたクロロルが盛大に彼女を引っかいた。