王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?



「それじゃあ訊くが、俺たちの所持金すべてをこの親子にやったとする。
それでは俺たちはどこに泊まる? どうやって食料を手に入れる?」


メイフュが矢継ぎ早に問えば、クママルはもごもごと下手な言い訳をする。


「あたしは……野宿くらい平気だもん! 食料の魚釣りや果実取りだってがんばるし」


「ここには森や川や山や海もないのにか? 乾ききって草むらすらないぞ」


メイフュがそこまで言うと、クママルは見る間に頬を赤くした。


瞳に涙を浮かべたクママルに、メイフュは更に追い討ちをかける。


「この親子に金を渡しても、所詮は一時的な善行に過ぎない。
大切なのは継続した収入を得る方法を見つけ独立させることだが、この街の失業率から言えば未亡人女性に出来る仕事は限られている。
だからこそ、本人達の意志で自らを変えさせねば意味がない。
ただ嘆いて他力本願でいるだけでは、金を渡してもあっという間に使い切るだけだろう」


メイフュは手厳しいことを言うが、もちろん好き好んでやってはいない。


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