王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
転がってきたのは大きさが50センチから1メートルはあろうという巨大カボチャ。
しかも、一つだけならともかくそれが無数に転がって来る。
どんごろどんごろと派手な音を立てて落ちるカボチャに、クママルはわたわたと右往左往する。
つまりは完全なパニック状態に陥り、なぜか水筒を取り出しお茶を飲みだした。
そんな彼女に向かい、クロロルが身を踊らせた。
「フギャー!」
どべええぇん!
「うっきゃああああっ!?」
クロロルの強烈な猫キックを頬に食らい、クママルは10メートルほど盛大に吹っ飛んでく。
しかし、それで間一髪巨大カボチャに押しつぶされることは免れたのだ。
クママルをぶっ飛ばしたクロロルは、着地するとすぐさま踊るように優雅にカボチャを避けてゆく。
そして、フードを被っていたもう1人はカボチャを無駄なく避け、激しい動きでフードが脱げた。
現れたのはサラリと輝くプラチナブロンドに、澄み切ったブルーグリーンの瞳。
透けるような白い肌に絶世の美女と形容すべき整えきられた顔。
だが、しかし。
その口から出た声は、紛れもなく少年のものだった。
「シロロル、怖がるな。私が着いている」
カバンで震える相棒を優しく撫でた少年、メイフュは腰に提げた鞘からスラリと長剣を抜く。
そして。
地面を蹴り態勢を低く走り込むと、白刃を煌めかせカボチャを一刀両断する。
メイフュが剣を振るって僅かな後。カボチャは全てバラバラになって積み上がった。