王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
キュリオは一生懸命に文字を思い出した。
“1はあ。9はけ。44はろ”
……あけろ。
開けろ!?
キュリオはその意味を理解し、木箱のフタをそっと押し開いた。
すると。
その中から出てきたのは、木製の短剣や貝殻、ネズミのミイラ。
それを見たキュリオの目が驚きから見開かれた。
だって、それは。
トムをはじめとする子ども達が宝物として大切にしていたと知っていたから。
特に世界一強く硬い木から削りだしたという木の短剣はトムご自慢の品で、キュリオは1度も触れさせてもらえなかったほどなのだ。
それがなぜここに? というのは愚問だろう。
ナイフの柄の部分にヘタな彫り込みで“キュリオの”と刻み込まれている。
トム達からの精一杯の餞別なのだろう。
キュリオはじいんと来て、宝物を急いでカバンにしまった。
そして。
馬車に乗るときに、思い出した。
かぼちゃ祭りで優しかったあの女の子のことを。
あの子は誰だったのかな?
自分よりも少し年上だった、親切であたたかかった少女は。見送りに来てくれなかったけど。
なんだかまた会いたいと思う。
(僕が頑張って大人になったらまた会おう)
キュリオは少女からもらったお菓子を、甘い思い出とともにそっとしまいこんだ。