王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
キュリオ親子のお陰か、水がないこの土地に灌漑の資金援助と技術供与をするとドンミロッテは町長に申し出た。
もちろん町長が断る理由などない。
こちらもあっという間に話がまとまり、灌漑のための基礎的作業をクママル達は数日間無償で手伝った。
ついでに掘られた井戸ではクロロルが見つけた水源で水も湧き出し、町の人たちの暮らしも潤うだろう。
「なんだかクロロル大活躍だったね」
いつもの旅路に戻り、クママルは嬉しくて褒めた。
あの親子はこれからきっと幸せに暮らせることだろう。
もはや家族がいないクママルにすれば、キュリオ達が幸せになれるなら自分も幸せに感じられる。
他の人が幸せなら自分も幸せなのだ。
だから結局今回も最後まであの親子を見守り幸せになる手助けした。
(まったく……どこまでお人好しなんだコイツは)
メイフュは呆れるが、それがクママルだから放っておけない。
(まあ仕方ない。もう少しこいつに付き合うか)
ノイ王国に帰るのはもうちょっとだけ先に延ばせばいい。
クママルには自分がそばにいなければな、とメイフュは思う。
もうちょっと、もう少し。このままで。
「お~い! メイフュ行くよ!」
元気よく手を振るクママルにため息をつきながら、メイフュはすこし笑みをたたえて追いかけた。
新しい風は吹き始めたばかりだった。
【完】