王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
「あの……クロロルさん? 重いんですけど」
クママルがいくら抗議しても、馬耳東風なクロロル。
今でもクママルの肩に乗り、すっかりくつろいでいる。
とはいえ、乗られた方にすれば、落とさないように気遣う上にずっしり重いんですけどな状態。
しかも今は急勾配な坂を登らないといけない。
乗られた本人はたまったものではないが、クロロルにすればそんな程度は些細な問題にすらならないらしい。
くああ、と欠伸をしながら毛のお手入れなぞを始めた。
メイフュは2人のやり取りなど全く関心がないのか、振り向きもせず坂を黙々と登る。
そして、そんな一行が上り坂のてっぺんに着くと、摩訶不思議な光景を見た。
あたり一面カボチャだらけだけでなく、ぽつねんと建った一軒家が丸ごと一個のカボチャでできており、全てがカボチャ尽くしだったのだ。
なぜか木の枝にもカボチャがなりぶら下がり、その木を這う蔓にも小さなカボチャ。
あたり一面カボチャだらけの光景に、クママルは驚きを隠せない。
「うわあ~すごいや、こんなにカボチャだらけなんて。不思議だねえ、ね。メイフュ」
「………」
クママルに話しかけられても、メイフュはだんまりなまま。ムスッとした顔つきでプイッとそっぽを向いた。