王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
カボチャだらけの光景に、クママルは恐れる……
はずもなく。
好奇心のままにカボチャの小屋に近づき、それを眺めてはつついたりしている。
「すごいな! 本当に本物のカボチャで出来てるよ。不思議だなあ」
少女らしい好奇心旺盛なクママルを置いておき、メイフュは素早く辺りを見渡した。
見たところ、カボチャ以外特に変わった様子は見られない……が。
それは五感に限定した話だった。
メイフュは感じていた。
不可思議なものの存在を。
剣の柄に手を添えたまま、その方角に歩みを進める。
……前に。
バリバリバリバリバリバリ。
「痛い! 痛い! た、助けておくれな!!」
クロロルに顔を引っかかれた白髪の老婆が、悲鳴を上げながらカボチャ小屋から出てきた。
叫びながら走り回る老婆だが、その手に握っていたものを見たメイフュは得心がゆく。
人形(ひとがた)――。
呪いの闇の術の一種で、念を込めて相手を操る事もできる。
もっとも、相手より術の力が上でなければ成功しないし、失敗すれば倍返しがあるのだ。
こんなカボチャだらけのさなかで闇の術。
メイフュは引っかかるものを感じた。