王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
「こら、クロロル! やめなよ」
クママルがクロロルを強引にひっぺがし、やっと解放された老婆は息を着く。
「あいたたた……まったく、乱暴な猫だねえ」
「ごめんなさい。あの……ここに住んでるんですか?」
クママルは謝りながらも、どうしてもウズウズしてつい訊いてしまった。
「そうだよ。この丘には生まれた時から住んでもう77年さ。先祖代々この土地に住んでたから。
まあ立ち話もなんだし、お茶くらい淹れよう。着いといで」
「はい!」
老婆の誘いにクママルはあっさり乗り、何の警戒もなくカボチャ小屋に消えた。
まったくこれだからな、とメイフュは胸の中だけでため息を着いて後に続いた。
カボチャ小屋のなかはごく普通の木造になっており、小さいながらひと通りの家具は揃い清潔に保たれていた。
小花模様のティーセットを取り出した老婆にクママルは駆け寄る。
「あたしお手伝いしていいですか?」
「ほお、感心なもんだ。近ごろの若い冒険者は茶のひとつで礼すら言わないが、あんたはずいぶん礼儀正しいんだねえ」
褒められたクママルは、そばかすの乗った頬をすこしだけ赤らめた。