王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
メイフュは警戒を強めながらも、とりあえず剣の鞘から手を離す。
それでも、抜刃できる態勢に変わりない。
老婆はカラカラと笑い、いつの間にか淹れた茶をメイフュの前に置いた。
「なに、わしもちょっとした知り合いがおるからね。あんたは顔見知りでないが……ある世界的な組織でな。それから情報を得てたんだ。
わしは占い師じゃないから、顔だけを見て全て解る事はない。
だがね、多少のまじないをできる力はある。
この力は老若男女問わず必要とされる……人の心を動かす力さ。
たとえば」
老婆は手元にあるティーカップを持ち上げ、一口飲んで渋い顔をする。
「このハーブティーはこのまま飲むと途轍もなく苦い。だが……」
そう言ってからひとつまみの花を浮かべ、かき混ぜる。
すると茶色いお茶はたちまち黄金色へ変わり、香りもよくなった。
老婆はそれをひとくち飲み、にっこりと笑う。
「こんなふうにな、ちょっとした要素で幾らでも変わる。それは人の心も同じだよ。
肝心なのは、望む者の誠実な気持ちだ。
わたしのは決しておもしろ半分では成就しないまじない。
だから、あんたが真に望むならばまじないをしてやろうよ」
老婆はそう言って、ひとつの小さなかぼちゃを取り出した。