カタブツ竜王の過保護な求婚


「それで、どうなさるおつもりですか?」

「どうするとは?」

「この先のことです。まさか妃殿下に何もおっしゃらないおつもりではないでしょう?」


 書類から目を上げもしないフィルの問いに、カインは眉をひそめた。


「それは……もちろん出かけることは伝えるだろうが……」


 手を動かしながら不機嫌に答えたカインは今、夜の食事をとりながら仕事をしていた。
 レイナと過ごした午後のひと時が思いのほか楽しく、執務に戻るのが予定よりも遅くなってしまったのだ。

 アデル夫人が見たなら行儀が悪いと口うるさく言うだろうが、あいにく周囲の者たちはその姿を見慣れているので窘めることはしない。
むしろ、もっと効率良くと、せっつく者もいるくらいだ。……筆頭秘書官のことだが。


「夫に隠し事をされるなど、妻にとっては寂しいでしょうねえ。ましてや新婚だと不安にもなるでしょうに」

「では、全てを話せと言うのか? 彼女はフロメシアの王女だぞ?」

「全てをお話しになる必要はないでしょう? ただある程度の説明があれば安心なされるのではないかと思っただけですよ。それと、あの方はもうフロメシアの王女ではなく、ユストリスの王太子妃です」

「……わかっている」


 家族になろうと約束したのだ。
 しかしこれから行うことはレイナを傷つけることになるのではないかと、それで嫌われてしまうのではないかとカインは怖かった。
 できれば巻き込みたくもない。

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