カタブツ竜王の過保護な求婚

 柔らかな光を放つ月が中天に差しかかる頃。
 寝支度をちょうど終えたレイナの許へ、メイドの一人が慌てた様子でやって来た。


「王太子殿下のお越しです」

「殿下が?」


 興奮したメイドの言葉に驚いたレイナの周囲で、アンヌたちもはっと息をのむ。


「す、すぐに行きます」


 答えた声はうわずっていた。
アンヌが急いでレイナのまとった薄い夜着の上に厚手のガウンを着せかける。
 支度を整える小部屋から居間へと戻ると、カインは窓辺に立って待っていた。
 その表情は険しく、初めての夜を思い出したレイナは足を止める。


「すまない、こんな夜遅くに」


 ちらりとレイナを見てすぐに視線をそらしたカインに、不安が胸を占めていく。


「いえ、大丈夫です。……何かあったのですか?」

「大切な話があるんだ」


 やはりあの夜のようで、レイナの脈拍は速くなる。
平静を装ってソファへと腰をかけたものの、アンヌがお茶とお酒の用意をして下がると、心細くて仕方なかった。
 青ざめた顔にどうにか笑みらしきものを浮かべ、向かいに座ったカインに問いかける。


「何かお飲みになりますか?」

「いや、いい」


 あっさり断られて、手持ちぶさたになってしまったレイナはそわそわと動きそうになる両手をぎゅっと握りしめた。

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