カタブツ竜王の過保護な求婚
この国に嫁いで来て、よくわかったことがある。
近年までひっそりと存在していたユストリス国の興隆は、確固たる信念を持った主導者であるジナフ王と王太子のカイン、忠義に篤い貴族、勤勉な政務官、剛健な武官、そして、それらを支える民、全ての力で成し遂げてきたのだ。
もちろん反発もあっただろう。
その中で一番の反発、人間である自分が王太子妃となったことでいらない苦労もあるはずだ。
それなのに当の自分がくよくよしていてはいけない。たとえお飾りの王太子妃だとしても、何かできることがあるはず。
今は無理でも、きっと役に立ってみせる。だからまずは、寂しくても、不安でも、笑顔でいるべきなのだ。
「どうか、ご無事でお戻りください。わたしはここで、お待ちしております」
「――ああ、ありがとう」
微笑むレイナに、目を細めてうなずいたカインは、それきり黙りこんでしまった。
その静けさが、沈む心にさらに重くのしかかる。
レイナは気分を変えようと明るい話題を口にした。
「あの、わたしずっと考えていて、あそこに……花耶菜を植えようと思うんです」
「……花耶菜?」
「はい。とてもおいしくて、栄養もいっぱいですし、それに……」
言いかけたレイナは、顔を赤くしてうつむいた。