カタブツ竜王の過保護な求婚
この王女もかなり元気が過ぎるようで、いつもお付きの者たちを振り回しているらしい。
今もジェマの後ろには息を切らして走る侍女の姿が見える。
レイナとジェマが対面してすぐに仲良くなったのも当然だろう。ただし、王女はまだ十歳だが。
「ごきげんよう、レイナお姉さま!」
威勢の良い上品な挨拶と一緒に、ジェマはレイナに飛びついた。
青ざめる王女の侍女たちと、何かを思い出したように笑いを含むアンヌや騎士たち。
それでも一応、レイナが転ばないようにと騎士の一人が素早く背後に回ったが必要はなかった。
レイナはしっかりジェマを受け止めて、ぎゅっと抱き締めた。
「こんにちは、ジェマ」
ジェマも種は王妃であるウサギの獣人だが、空色の髪の毛に琥珀色の瞳をしている。
「お姉さま、今日はわたし、あちらの畑の収穫に来ましたの」
青々と繁る蔦を支柱に絡ませ、小さな白い花があまた咲く畑を、ジェマが指差した。
よく見れば緑の中に、ぷっくりとふくらんだ実りがたくさん垂れ下がっている。
「まあ、素敵。ぜひ私も手伝わせてください」
「はい、もちろんです!」
嬉々として大きくうなずいたジェマは、侍女から山ぶどうの蔓を編んだ籠を受け取ると、もう一つをレイナへと差し出した。そして畝の間をすいすいと進み、瑞々しい実に手を伸ばす。