カタブツ竜王の過保護な求婚
レイナもジェマの手元をじっくり見ながら、簡単に教えてもらった通りに実をもいでいくが、どうしても手こずってしまう。
ジェマはすっかり手慣れた様子だ。もっと幼い頃より、王妃の手伝いをしていたらしい。
畑仕事はユストリス王家の伝統でもある。
力に驕ることなかれ、というのが王家の教訓でもあるらしいのだが、それがどのような力かはまだレイナはほんの一部しか知らなかった。
だが、ユストリス王家の伝統を受け継ぐことができてレイナは嬉しかった。
カインや両陛下たち家族に少しは認められたようでもあったからだ。
またユストリス王家の男子は十二歳になると、身分を隠して断続的に遊学に出るそうだ。
カインも諸国を周ったらしく、今現在はカインの十七歳になる弟――レオンが遊学中だった。そのため、レイナとはまだ対面を果たしていない。
「わたし、本当はカインお兄さまにお嫁さんが来るの嫌だったんです」
「あら……」
思わぬ言葉を聞いて、レイナは手を止め、ジェマを見た。
ジェマは少し決まり悪そうな顔をしている。
「だって……お相手がフロメシアの王女さまだって聞いて、きっと意地悪な方なんだって思ったから……」
レイナと目を合わせず、実をそっちのけで、ジェマはもじもじと葉をいじり始めた。
「だってお兄様たちが招待されたバルセスこうしゃくけのカミーラさまはすっごくいじわるな人なんだもの。お父さまや、お兄さまの前ではにこにこしてるのに、わたしにはいやなことばかり言うんだから。えっと……長い耳がぶざまだとか、下等なけものって!」
「まあ! それは酷いわね!」
「でしょう⁉」
怒りに燃えるジェマが頭を振ると、長い耳が意思を持っているかのように揺れる。