カタブツ竜王の過保護な求婚

「本当に、あの人とお兄さまが番にならなくて良かったわ!」

「番……」

「ええ! みんな噂してたもの! お二人はお似合いだって! どこがお似合いなのかわたしにはさっぱりだけどね」


 ぷりぷりしながら語るジェマは、レイナがわずかに表情を暗くしたことには気付かなかった。


「カミーラさまはお兄さまたちと同じ、完璧な人型になれるからってご自分のことを特別だと思っているのよ。それに、カミーラさまににらまれたら、怖くて動けなくなるの。だからフロメシアの王女さまも怖い方だと、わたしのことを獣くさいって、バカにするって思ってたの」

「まさか……そんなこと思ったりもしないわ」

「よかった!」


 同じ獣人のはずのカミーラがこ自国の王女――ジェマへ酷い言葉と態度をとっていたことにレイナは腹を立てていた。
 自分より弱く逆らえないのをいいことに、好き放題言って嫌な思いをさせるなどと。

それでも人間である自分よりも、カミーラとの結婚を望む者が多いのだ。
カインもまたレイナが現れるまではカミーラと結婚する――番になるつもりだったから、初夜にあれほど厳しく冷たかったのだろう。


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