カタブツ竜王の過保護な求婚

 今まで何度も帽子をかぶるようにお願いしても、邪魔だからと断固拒否されていたのだ。
 いくら丈夫な獣人といえど、まだ幼いジェマが長時間直射日光を浴びるのは体に負担がかかる。
 侍女たちはレイナへ感謝の気持ちを大いに抱いた。
その上、ジェマに関して困ったことがあれば、王妃の他にも相談できる相手が現れたと喜んだ。


「わたし、お姉さまが大好き。こんなに素敵なお姉さまができて、すっごくうれしいの!」

「ありがとう。私もジェマが大好きよ。こんなに可愛い妹ができて、すっごく嬉しいわ。私たちは相思相愛ね?」


 無邪気な告白に、レイナも素直に返すと、ジェマはさらに顔を輝かせた。


「でもわたし、お兄さまの邪魔はしないわ。だって、カインお兄さまとお姉さまも、相思相愛でしょう?」

「そう……だったら、良いのだけれど……」


 ジェマに問われて、レイナは曖昧に答えた。


「あら、絶対そうに決まってるわ。ここ最近のお兄さまはすごく穏やかになって、ちょっと前までいらいらしてたのが嘘みたいだもの。カインお兄さまには初恋の人がいて、ずっとその人のことが好きなんだって、レオンお兄さまから聞いた時には、なんて素敵なのかしらと思ったけれど、きっとだまされたんだわ」

「……初恋、の人?」

「ええ。だからわたし、てっきりカミーラさまのことだと思って、カインお兄さまは見る目がないなって思っていたの。内緒ね」

「え、ええ。もちろんよ……」


 沈んだ声で添えられた謝罪に、レイナはどうにか首を振って応えた。笑みらしき表情も作れている。
 それでもジェマから聞いた話が頭の中で何度も何度も繰り返され、心に重く圧しかかっていた。



< 115 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop