カタブツ竜王の過保護な求婚
一部に嫌な人たちもまだいるが、それでもレイナは気持ちよくこの国で過ごせているのだ。
「よし! いつまでも、うじうじしてたって仕方ないわ!」
「そのご意見には賛成ですが、叫ぶ必要はございません」
鼻息荒く、奮起して立ち上がったレイナに、アンヌが呆れた様子で応じた。
「レイナ様がいつまでも鬱々となされていらっしゃるから、お天気まで雨続きで困ります」
「ちょっと! お天気は関係ないわよ!」
「あら、ございますよ。ほら、ご覧になってください」
アンヌが窓の外を手で示せば、いつの間にか雨はやんでいた。
「まあ、本当に。太陽神さまも、やっとお顔を見せてくださいましたねえ」
ノーラが窓辺へと近付き、面白がって呟く。メイドたちもくすくす笑う。
沈みがちだったレイナが、ようやくいつもの調子を取り戻したことで、皆が胸を撫で下ろしていた。
雲間から射す光は遠く連なる山々を照らし、立ち上る霧を晴らしていく。
あの山の向こうにはカインがいるのだ。
(大丈夫。きっと全てが良い方へ向かうわ。そのためにわたしも頑張らなくちゃ!)
力強い姿を現し始めた太陽を見て、レイナは両脇でぐっとこぶしを固めた。