カタブツ竜王の過保護な求婚
 そこに、独り言のようにルルベラが呟く。

「あ、そうそう。居候は仕方ないにしても、年老いた役に立たない使用人をいつまでもここに置いているわけにはいかないわよね。そもそも居候のくせに使用人がいるのがおかしいのよ。今すぐ解雇するようお父様にお願いしないとダメね」

「お待ちください! ノーラは……みんなは――」

「誰に向かって口を開いているの? 私はあなたに発言の許可を与えていないわよ。目障りだから早く消えてちょうだい」

「ですが——」

「しつこいわ!」


 部屋から出ていこうとしていたレイナはルルベラの言う『年老いた使用人』が誰のことをいっているのかに気づいて足を止めた。
 慌てて引き返し、ルルベラの足元に膝をついて懇願する。

 だが、聞き入れられることもなく一蹴すると、新たに淹れられたお茶の入ったカップを今度はレイナの頭上でゆっくり傾けた。
 その熱さに怯みながらも、レイナは額を床にこすりつけんばかりに頭を下げていた。


「そうね。この王宮に年老いた役立たずの使用人はいらないけれど、ユストリスでなら必要とされるかもしれないわね。だって、獣人の国になんて誰も行きたがらないでしょう? ねえ?」


 ルルベラが問いかければ、侍女たち大きく頷いた。

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