カタブツ竜王の過保護な求婚
自分がどれほどに余計なことを口にしてしまったのか気付き、夫人は落ち着かない様子で視線を泳がせた。
「あ、あの、妃殿下……。それでフロメシア王国のことなのですが……」
「――はい。……いったいフロメシアで何が?」
下手に弁解するより、話題を進める方がいいと判断して、夫人は本題に入った。
応えて、レイナが先を促す。夫人はほっとして続けた。
「先の戦で先代国王陛下は退位を余儀なくされ、新国王陛下のレグル様はユストリス寄りの政策ばかり。フロメシアの民の中にはユストリスの内政干渉だと不満を漏らしている者たちがいると。まさか獣人たちが我が物顔で自分たちの国を闊歩するなど思いもよらなかったのでしょう」
「そうでしょうか? わたしには十分に温情を与えられていると思いますが。敗戦国であるにもかかわらず、領土を奪われることもなく皆が今まで通りに暮らせるのですから。そもそも、あの戦はフロメシアからの一方的な宣戦布告による突然の侵攻だったのですから、非は全面的にフロメシアにあります」
憤然とするレイナを、男爵夫人はどこか冷やかに見てうなずいた。