カタブツ竜王の過保護な求婚
事が公になり、それが男爵夫人の親戚からだと知れれば、フロメシアの一部からは裏切者として、ユストリスでも場合によっては加担しているとして、困難な立場に追い込まれる可能性もあるのだ。
しかし、レイナに何ができるだろう?
混乱する頭で必死に考える。それなのに、アルクネト大公の話が気になって、集中できない。
ジェマが言っていた、カインの初恋の人とはカーラではなくアルクネト大公のことなのだろうか?
今も二人は一緒にいるのだろうか?
(ダメ。そんなこと考えている場合じゃない。それに、たとえその通りだとしても、私は私のやるべきことをしないと!)
自身を強く叱咤して、レイナは淑女らしい笑みを浮かべた。その顔は青く、膝の上に置かれた両手は固く握られている。
「申し訳ございませんが、今は全てが急なことで、酷く混乱しております。どうか私に少しお時間をください」
「……ええ、そうでございますね。わたくしも動転のあまり、つい妃殿下を頼ってしまいましたが、余計なことばかり……。本当に申し訳ございません。ですが、事がはっきりするまでは、まだ内密にお願いしたいのです」
「ええ、わかっております。このあまりの大事に、うかつには動けませんから」
男爵夫人の目を真っ直ぐに見据えて、レイナは大きくうなずいた。