カタブツ竜王の過保護な求婚
5
あれからレイナはできることに精いっぱい力を注いで、日々を過ごしていた。
その中で、毎朝の日課になってしまったことがある。
「レイナ様、ご気分はいかがですか?」
「気分は悪くないのよ。まぶたが重いだけ」
赤く腫れたまぶたに、冷やした布と温かい布とを交互に当てながら、レイナはノーラに答えた。
ここのところ、夜になっても眠れないのだ。
昼間は何かと忙しく、時間をやり過ごすことができるのだが、夜になって一人ベッドに入ると途端に不安が襲ってくる。
男爵夫人の従姉は、王城から、王都から離れろと伝えてきたと言う。ならば謀叛は王都で、王城で起こるというのだろうか。
レイナは色々な人たちと話をして、情報収集を心がけていた。
また、アンヌやノーラにも城内の噂を拾ってくるようにと頼み、近衛騎士には街へと足を運んでもらっている。
その結果、やはり城や街のあちこちで不穏な動きが感じられた。
だが、それをはっきりと形にして掴むことができない。まるで目の前に漂う霞のように。
レイナたちだけでは限界なのだ。
どうすればいいのかわからず、酷く怖かった。
その上、ベッドに横になれば、カインのことを思い出してしまう。
フロメシアに訪問してからの優しい仕草、時折見せてくれる温かな微笑み。
恋しさのあまり込み上げてくる涙を必死にこらえた。