カタブツ竜王の過保護な求婚
皆がほっと息を吐く。
あれほどにレイナを落ち込ませ、これほどに喜ばせるなど、それほどに王太子殿下は魅力的なのだろうかと疑問に思わずにはいられない。
ただ、レイナが幸せならばどうでもいいことである。
皆の心配をよそに、当のレイナは「一人にしてね!」と叫んで、手紙を胸に抱いたまま寝室へと駆け込んだ。
ぽふっとベッドに腰掛けると、どきどきしながら、手紙を見つめた。
開けるのがもったいない。
何も書かれていない表を見て、カインの名が記された裏を見て、と何度も繰り返し、ほうっと吐息を洩らした。
だが、幸せに浸れたのもそこまで。ふと嫌な考えが忍び込んでくる。
(もしかして、悪い知らせかも……)
前と同じに、また滞在が長引いてしまうとか、大公ともっと一緒にいるとか、まさか離縁状だったりなど。
一度悪い方へと考えが向くと、あっという間に囚われてしまう。
そこから逃れるためにも、読まなくては。
今度は別の思いでどきどきしながらも、レイナはサイドチェストからペーパーナイフを取り出して、ゆっくりと封を開けた。
折りたたまれた手紙を広げ、恐る恐る目を落とす。
『 戻るのが遅くなってすまない。
だが、近いうちに必ず帰るから、待っていて欲しい。 』
先の二通と違い、一枚の紙に短い二文のみ。
しかし、レイナにはそれで十分だった。