カタブツ竜王の過保護な求婚
緑のサロンに入ると、人払いを請われたが、それはさすがに断った。アンヌとラベロは絶対に信用できるからと。
渋々ながら受け入れる夫人を前にして、なぜだかレイナの不安は募った。心臓が早鐘のように打つのは、おそらくこれから夫人に聞かされる話のせいだ。
夜の緑のサロンは、爽やかな昼間の雰囲気とは全く違った。
深い闇に沈む木々が、まるで恐ろしい怪物に変化して、室内へと忍び込もうとしているように見える。
「男爵夫人、話してください」
今度はレイナが急かした。早く終わらせてしまいたい。
この後、もう一度王妃に会いに戻って、全てを話そうと決意したのだ。
きっと王妃さまなら悪いようにはしないだろうと。ラゼフ王もほとんど回復したと聞いたばかりだ。
(お二人なら上手く解決へと導いてくれるはずだもの)
レイナは無意識にドレスのスカートを握り、夫人の言葉を待った。
「それが……先ほど届いた従姉からの手紙によると、ユストリスに入り込んで暴動を企てている者たちが明日の夜には一斉に蜂起すると」
「明日? そんなに早く?」
「はい。時間は十分にかけて準備を整えているそうです。街に潜んでいる者たちが火を放ち、その混乱に乗じて一気に王城に攻め込むと」