カタブツ竜王の過保護な求婚
「小生意気な侍女と老いぼれ騎士の二人で、果たして妃殿下をお守りできるかしらねぇ?」
「何を――」
言いかけたレイナは、はっと口をつぐんだ。
サロンで給仕をするためのドアから、見知らぬ騎士たちがなだれ込んできたのだ。
その数は五人。――かと思いきや、廊下へと繋がるドアから、先ほどまでレイナの護衛をしてくれていた騎士二人が入って来た。手に握る剣を、レイナたちに向けて。
「さて、状況はおわかりいただけたと思いますので、一緒にお越しくださいますか? 素直について来てくだされば、このように手荒なまねはせずとも良かったのですがねえ、妃殿下?」
今まで以上に鼻につく、ねっとりとした話し方。レイナはこの話し方が大嫌いだった。
「……私を連れ出して、いったいどうするおつもりです?」
じりじりと距離を詰めようとする騎士たちを横目に見ながら、テーブル越しに優雅に座る夫人に問いかけた。
「あら、おわかりになりませんか? 簡単ではございませんか。わたくしどもにご協力いただくのです」
「協力など……」
「別に妃殿下に何かしていただく必要はございませんのよ。ただ、わたくしどもと一緒にいらしてくださるだけで、妃殿下は――フロメシアは下等な獣人の国に与したりしないのだと国内外に知らせることができるでしょう?」
今や、夫人の顔には勝ち誇った笑みが広がっている。