カタブツ竜王の過保護な求婚
「妃殿下を擁するわたくしどもに、果たしてユストリスは強硬姿勢を貫くことができるかしら? フロメシアにユストリスを攻め込む大義名分を与えてしまうものね」
「それは……」
確かに、レイナに何かあればフロメシアとユストリスの関係は最悪のものになるだろう。
レイナは自分の不甲斐なさに腹を立てた。
(わたしはなんて非力なの……)
それでも、やらなければならないことはある。聞き出さなければならないことが。
「――モレト男爵夫人……あなたはいったい誰なのです?」
「あら、おかしな質問ですわねえ? 妃殿下が今、お呼びになったではありませんか」
「いいえ、それはあなたの本当のお名前ではないでしょう? アンヌたちに調べてもらいましたが、モレト男爵夫人はお体が弱く、今まで一度も領地から出たことがないと。男爵でさえ、夫人のことが心配だからと、めったにお出ましにならないそうです。ですからこの度、あなたが現れるまで城の人たちは誰も、男爵夫人の姿を見たことがなかったのよ」
レイナの言葉に、アンヌは間違いないと言うようにうなずいた。
ラベロは近付こうとする騎士たちを、その炯眼で以って押し止めている。
「まあ、いやだわ。妃殿下ともあろうお方が、こそこそと人のことを嗅ぎまわっていらしたなんて。それではどうして何もおっしゃらなかったのかしら? まさか、ご自分一人で解決できるなどと愚かなことを考えていらしたわけではないでしょう?」
嫌味な夫人の言葉に、レイナは何も返せなかった。