カタブツ竜王の過保護な求婚
もちろん自分一人で解決できるなどと、奢った考えはなかった。
ただ、どうすればいいのかわからなかったのだ。
遠慮などせずにもっと早く、王妃の優しさに甘えていればよかったのに。
自分の判断力のなさが、アンヌとラベロを、そして何の罪もない人たちを危険に曝してしまっているのだ。
嫉妬なんてしている場合じゃなかった。言われるまでもない。間違いなく、自分は愚かだ。
「あら、だめよ。妃殿下だけ逃がそうとしてもだめ」
レイナは夫人の声に注意を戻した。ラベロとアンヌの動きを夫人が見咎めたのだ。
「お優しい妃殿下が、あなた方を置いて逃げるわけないじゃない。ねえ、そうでしょう、妃殿下?」
馬鹿にした口調で問いかける夫人を冷たく見据えて、レイナは答えた。
「ええ、もちろんよ。だってわたしたち、三人で逃げるんだから」
「レイナ様……」
レイナの精いっぱいの強がりに、アンヌもラベロも困惑と呆れが入り混じったような声を出した。
「あらあら、まあまあ。妃殿下は本当になんてお優しい方なのかしら。そのような冗談でわたくしどもを笑わせてくださるなんて」
耳障りな声で笑うと、夫人はくっと厭な形に唇を歪めた。同時に、騎士の一人がアンヌへと手を伸ばす。