カタブツ竜王の過保護な求婚

 叩かれたことではない、カインを悪し様に言われたことが許せないのだ。
 レイナはいきなり大粒の涙を浮かべると、震える声で訴えた。


「……ごめんなさい。そんなつもりはなかったの。だって……あれは本当に素晴らしいものだから……でも……」


 声を詰まらせうつむいたレイナを見て、夫人は傲慢に笑う。


「ほら、ごらんなさい。こういう生意気な小娘には、少しくらいきつく当たった方がいいのよ」


 偽騎士たちに偉そうに言うと、すたすたとドアへと向かって歩き始めた。


「さあ、さっさと宝物庫へ案内してくださいませ、妃殿下」

「……はい」


 レイナはアンヌとラベロへ一度ちらりと視線を向けてから、しおらしく夫人の後を追った。その両側を偽騎士が固めている。
 そして、ナイフを隠し持った偽騎士に腕を掴まれたアンヌが続き、三人の偽騎士に囲まれたラベロが最後に続いた。

 二人は歯を食いしばり、必死にこらえていた。――吹き出してしまわないように。
 切迫した状況にもかかわらず、二人は久しぶりに見たレイナの嘘泣きに、明るい気持ちになっていた。
 レイナならばきっと、この不利な形勢を逆転することができると。


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