カタブツ竜王の過保護な求婚
当初は並外れた力を持った獣人たちの国を人間たちは恐れた。
しかし、獣人たちは特に人間たちに仕返しとして攻め入ることもなく、ひっそりと暮らし始めたらしい。
そのため、長い年月が過ぎるとともに、人々は獣人たちの本来の力――恐ろしさを忘れ、侮るようになっていったのだ。
獣人たちの国――ユストリス王国は厳しい北の大地にあったが、常人ではない力で開墾し、作物を育て、山から鉱石を掘り起こし、鉄を打ち、十分に自国内だけで生活できるだけの力をつけていた。
ただやはり北の大地ではどうしても手に入れられないものがある。
それらを得るために人間たちと交易し、対価に金を支払った。
幸いにもユストリス国内には金鉱山があったのだ。
フロメシア王国をはじめとして、各国はユストリスの金鉱山を狙っていた。
そこにこの度の災害で窮地に陥ったフロメシア王国は周辺諸国と手を組み、人間たちがユストリスへ攻め込んだ。
ところがユストリス王国はフロメシアなどの同盟国を簡単に打ち破り、諸国を驚かせた。
獣人たちに力があるとはわかっていたが、大国であるフロメシアをあれほど簡単に退けられるのか、と。
眠れる獅子を起こしてしまったも同然の出来事に人々は、これから獣人たちは次々と人間の国を蹂躙し始めるのではないかと恐怖した。