カタブツ竜王の過保護な求婚
「アンヌ、ラベロ、巻き込んでしまってごめんなさいね」
小さな呟きは、ちゃんと二人に届いたようだ。
「いえいえ、慣れておりますから」
「そうですなあ。むしろ最近はおとなしくていらっしゃって、あの鍛錬くらいでは物足りないくらいでしたよ」
ため息混じりにアンヌが応えると、うむうむと頷きながらラベロが同意する。
何も変わらない二人に元気づけられて、レイナは明るく反論した。
「ちょっと! あなたたちって相変わらず失礼よね、もう!」
ぷりぷりと怒ってみせると、夫人が不快そうに唇を歪めた。
「白々しく騒がれても、誰も助けになど来てくれませんわよ?」
「ごめんなさい。気分を害してしまったかしら? ただ、アンヌもラベロも幼い頃より一緒にいてくれたから、とても仲が良いの。フロメシアの奥宮で遊ぶ時には、わたしが誰よりも一番かくれんぼが上手だったのよ。それに鬼ごっこでも最後まで逃げ切ったわ。ねえ?」
足を止めないまでも、レイナは大きく振り向いてアンヌとラベロを見た。
「……はい。わたくしも常にご一緒させていただきましたので、どちらもすっかり得意になってしまいました」
「おや、私が参加させていただいたときには、そうでもなかったような……。もちろん私は今でも鍛えておりますから、ちゃんとレイナ様を追える自信はありますぞ」
二人は真っ直ぐにレイナを見返して、楽しげに言う。レイナは前へと向き直ると、ほっと息を吐いた。