カタブツ竜王の過保護な求婚
所々に射すおぼろげな光と、時折見える畑が今いる場所を教えてくれる。
きっと、アンヌもラベロも大丈夫だろう。
真夜中の鬼ごっこは幼い頃から何度も経験しているのだから。
皆が寝静まったところを見計らって部屋を抜け出しては見つかり、走って逃げ、追いかけられるということを何度も繰り返してきたのだ。
ドレスのまま走るのも当然慣れている。
時々、遠くから聞こえる怒声と金属がぶつかり合う音が、守護兵たちが気付いたのだと教えてくれた。
――もう、大丈夫。
城内に潜伏者がまだいたとしても、事が明るみに出た今は、解決するのも時間の問題だった。あとは少しの間、隠れていればいい。
――もう、大丈夫。
かくれんぼだって得意なのだから。
耳に入る足音は敵か味方かわからないが、まだそれほど近くではない。
レイナはスカートを急いでたくし上げ、大木から張り出した太い幹をしっかりつかんだ。そして、えいやっと地を蹴る。
背の高い男性が手を伸ばしても届かない位置まで登ると、体を小さくして、見つからないように身をひそめた。