カタブツ竜王の過保護な求婚

 しかし、ユストリス側が望んだのは賠償であり、蹂躙ではなかった。
 さらには人間たちが驚くほど、ユストリス側の要望は高くなかった。――人道的と言えるほどに。

 そこに降ってわいたようなフロメシア王女とユストリス王太子の婚姻による同盟に人々は慄き、王女に同情した。
 なぜなら今回の戦に姿を現したユストリス王太子の真の姿――獣に変化した姿を見た者たちは皆が恐怖のあまり記憶を失くすほどだったからだ。

 そのため、ユストリス王家の者たちが何の獣人なのかは未だに知られていない。
 ただ恐ろしい獣人の花嫁となるフロメシア王女の犠牲に感謝しつつも、戸惑ってもいた。
 今までルルベラ以外の王女の存在を知らされていなかったからだ。

 ひょっとして偽物なのではないかとの噂が広まったが、特にユストリス王国から抗議を受けることもなくそのまま縁談は進められた。
 レイナのことは貴族でも知らなかった者も多く、獣人は体力だけで、頭脳はさっぱりらしいなどと嘲笑する者もいたほどだった。 


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