カタブツ竜王の過保護な求婚

 喉が詰まって、か細い声しか出ない。ここにいると、すぐに行くと応えたいのに。
 それでもどうにか体を動かして、枝から枝へ足をかけ、最後は省略してえいっと飛び降りた。
 が、少々無理をしてしまったようだ。


「あっ!」


 地に着いた衝撃に足がじんと痺れ、思わず声が洩れ出てしまった。


「レイナ⁉」


 焦慮と切望が滲んだ声。大きくなる力強い足音。
 右手に剣、左手にランタンを持ったカインが、レイナの視界に映った。


「カイン様!」


 今度はしっかり声を出し、痺れる足を前へと進め、駆け寄るカインへと手を伸ばした。
 あと少し、あともう少し。
 その瞬間――。


「レイナ!」


 カインは剣を構え踏み込んだが、何もできなかった。
 レイナの背後から突如現れた男へと剣を届かせるには、あと一歩足りなかったのだ。
 お腹へ荒々しくまわされた無骨な腕が、レイナをカインから遠ざける。
 ぐっと押しつけられたのは見知らぬ男の体。逃れることを封じる、首元に突き付けられた剣。


「やあっと見つけた」


 耳元で聞こえたしわがれた声にぞっとして、レイナの背に冷たいものが走る。
 どうやら先ほどの男らしい。
 暴力的なほどに粗野な振る舞いが、騎士の姿を見せかけだけだと教えている。

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