カタブツ竜王の過保護な求婚
5
「――レイナを、妃殿下を放せ」
怒りを抑え、カインは静かに告げた。
「んなの素直に従うわけねえだろ」
にたりと笑んで、男はレイナに突き付けた剣をすっと動かした。
「レイナ様!」
この騒動に気付いて次々と駆け付ける騎士や兵たちの中に、アンヌとラベロの姿も見えた。
二人とも無事だったのだ。
レイナの体を喜びと安堵が駆け抜けたが、状況は何も変わっていない。
あまりに嬉しくて油断してしまったから。もっと周りをちゃんと見ていれば。
だが後悔しても遅い。
徐々に集まり始めた兵たちが、捕らわれたレイナの姿を見てはっと足を止める。
圧倒的多数にもかかわらず、カインたちの状況は非常に不利だった。
「レイナ様……」
弱々しい呟きは、手紙を託した近衛騎士のもの。
カインは手紙を読んで、急ぎ戻って来てくれたのだ。
「妃殿下を放せ」
レイナを捕らえた男へと、鋭い双眸を向けたままのカインは再び告げた。
しかし、男に聞き入れる様子はない。
「んー、そうしたら、俺やばいよなあ?」
男がくくくと喉の奥で笑うと、レイナに突き付けた剣まで小刻みに揺れた。