カタブツ竜王の過保護な求婚
「夫人も、他の者たちも捕らえられたぞ。お前がここで抵抗したところでどうにもならんのだ!」
ラベロが疲れを滲ませた、それでいて力強い声で訴えたが、無駄でしかなかった。
「別に、あの高飛車なばばあのことはどうでもいいんだよ。俺は金さえ貰えればな」
「……傭兵か」
カインの呟きに、男たちが楽しそうに反応する。
「せいかーい! しゃべるとぼろが出るから、ずっと黙ってたんだぜ? おしゃべりなこの俺が!」
子供のようにはしゃぐ男を見据えながら、取り囲んでいる騎士たちがじりりと動いた。
途端――。
「おっと、動くなよ。あんたら、この姫さんが大事なんだろう?」
レイナを捕らえた男が、剣を軽く引いた。と同時に、喉にぴりぴりとした痛みを感じ、レイナは眉を寄せた。
「レイナ様!」
アンヌの悲鳴が聞こえたが、すぐ耳元で響く厭な声の方にレイナは気を取られた。
「さあさあ、本物の騎士の皆様、兵士の皆様、ここよりもっと後ろへお下がりください。ああ、その前にちゃんと剣は捨ててくださいね」
男はいきなり慇懃無礼に告げたが、すぐにががなり立てる。
「おら! 早くしろよ!」
悔しげに歯を食いしばり、皆が剣を手放して数歩下がっていく。
カインもすぐに剣を手放して数歩後退した。