カタブツ竜王の過保護な求婚

「お頭、よくやりましたね」

「馬鹿か、おめえ。おめえらがしっかりしねえから、こんな不利な立場になっているんじゃねえか」


 レイナが人質に取られていることで有利だと思ったのか、隠れていたらしい男たち二人が合流してきたのだ。
 男は仲間が増えたことで先ほどよりも余裕が出てきたようだ。
 カインたちを馬鹿にしたように見回して、くっくと笑う。


「獣人も人質を取られて何もできねえとは、情けねえなあ」


 だがカインは男を無視し、レイナの細い首にうっすらと滲む血を険しい表情のまま見ていた。


「カイン様、私は大丈夫です」


 押さえ付けられているために小さな声しか出なかったが、これ以上の心配をかけないようにと、レイナは微笑んでみせた。


「……すまない」

「いいえ……」


 なぜカインが謝るのだろう。迷惑をかけているのはレイナの方だ。
 その思いを口にしようとしたが、男の言葉に遮られてしまった。


「おいおい、謝って欲しいのは俺たちのほうだぜ? なあ、殿下。あんたが俺たちの仕事を奪ったんだからよお」

「それで、こんな卑怯なことをしているのか? アルクネトでは民の望みもしない暴動を起こし、南部地域では不満を持つ人間たちを煽り、このセロナムの街に火を放とうと?」

「なーんだ、全部お見通しだったか」


 落ち着いたカインの問いに、男も落ち着いて返した。

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