カタブツ竜王の過保護な求婚

 カインはアルクネトに向かったのではなかった。ということは新大公とも会っていない? 
 弟のレオン。病気のはずの陛下。フロメシアの先代国王派の計画は前もって知っていた?
 ではレイナが心配する必要などなかったのだ。そして今現在、レイナは多大な迷惑をかけている。


「おおっと、後ろの兵たちをこっそり動かすなよ。ぺらぺらとおしゃべりして俺たちの気を逸らしたつもりか?」


 背後を振り返りもせずに、レイナを拘束した男が告げると、偽騎士が慌ただしく反応した。


「げっ! マジかよ!」


 男の声に我に返ったレイナだったが、背後を確認することはできなかった。
 ただカインが軽く左手を振ると、遠ざかる足音がかすかに聞こえた。

 そのカインの金色に光る瞳は、真っ直ぐにレイナを見つめ、無言で訴えていた。――必ず助けると。

 今度はちゃんと、レイナはにっこり笑って応えた。
 恐れることはない。目の前にはカインがいるのだから。
 自分の行動を後悔しても仕方ない。これからどう行動するかだ。
 とすれば、答えは簡単――お淑やかなんて捨ててしまえばいい。

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