カタブツ竜王の過保護な求婚

 竜の姿を認めたのか、衛兵たちの声がバルコニーの下から聞こえ、すぐに部屋側からノーラが飛び出してきた。
 傍には医師らしき者もいる。


「レイナ様! よくご無事で……」

「心配かけてごめんなさい、ノーラ」

「妃殿下、お怪我の手当てをさせてください」

「ええ、お願いします」


 首筋の傷はすでに血も乾いているが、抱きついてきたノーラの背中を叩きながらレイナは医師に答えた。
 そもそも、すぐに医師が部屋へとやってきたのはどうしてなのだろう。


「先生、どうして私が怪我をしていると――バルコニーにいるとわかったのですか?」

「陛下からのご命令です。ここだけの話ですが、陛下と殿下方はお互い遠く離れた場所からでも意思の疎通が図れるようですから」

「そうだったのね……。羨ましいわ」


 遠く離れた場所でも会話ができるのなら、今までこんなに寂しい思いをしなかったのに。
 部屋へと入り、剣を握ったままであることに苦笑する。
 剣を邪魔にならないところに置いて椅子に腰かけると、おとなしく治療を受けた。
 その間も先ほどの夢のような体験のことが頭から離れない。


(まさかカイン様が伝説の竜だったなんて……)


 はっきり肯定されたわけではないが、レイナは確信していた。
 あの金色の瞳もカインと同じ優しく輝いていた。早くカインに会って話を聞きたい。
 レイナは医師の処置を受けてから、身体を簡単に拭いてもらい着替えた。
 それからは居てもたってもいられず、ノーラが止めるのも聞かずに部屋の外へと飛び出した。 



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