カタブツ竜王の過保護な求婚


 新国王となったレグルは今までの国政の在り方を変えるべく、新首脳陣たちと目まぐるしく働いていた。
 とある書類に署名を終えたレグルは次の仕事にとりかかろうと、うずたかく積み上げられた書類に顔を伏せたまま手を伸ばした。

 そこで固いものに手が触れ、視線を向けて思わず舌打ちする。
 妃候補である令嬢たちの釣書と小さな肖像画の山に間違えて手を伸ばしていたのだ。
 今まではのらりくらりとかわしていた結婚も、王位に就いた今は逃れられない。

 レグルはうんざりして深く息を吐くと、椅子から立ち上がり、中庭を見下ろした。
 そして、いつものようにレイナを捜していることに気付いて自嘲する。

 十日も前にレイナはユストリスへと旅立ったのだ。
 ひと月以上も前、レイナから手紙を受け取ったレグルは驚いた。
 妾腹の娘であるレイナは、王宮に引き取られたときから常にレグルたち義理の家族に遠慮し、自分から声をかけてくることもなかったのだ。

 それでもレグルは何かと気にかけていた。
 レイナ自身は生まれに何の罪もないのに、実の父親であるラクスはもちろん、母や妹のルルベラからも嫌悪され、それが気の毒だった。

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