カタブツ竜王の過保護な求婚
レイナはそんな広間の様子よりも、カインも同じように考えているのだろうかと不安になっておそるおそる見上げた。
カインの表情は厳しく、まるで初めて顔を合わせたときのようでレイナは怯えた。
いつもはこんなに弱気ではないのに、怪我と疲れからカミーラに言い返すこともできない。
「カミーラ嬢、あなたはこんな時間なのにこれから出かけるかのような装いだな」
「は、はい?」
「あなたはこの城に滞在していたはずだろう? 今からどこかへ出かけるのか?」
指摘されてはじめて気付いたかのように、カミーラは自分を見下ろした。
レイナもカミーラを見て、確かに、と思う。
カミーラはいつもの華やかなドレスではなく、暗色の外套を羽織り、その裾から覗くドレスも地味な色でレースもついていない簡素なものに見えた。
また外套もすっぽり頭を覆うローブのようでもある。
「こ、これは……街から戻ったばかりで……」
「少し前から厳戒態勢がしかれ、城内の出入りは厳しく制限されている。それなのに入れたのか?」
広間には用ある者は立ち去り、今は騒動を聞きつけてやってきた貴族たちばかりで、皆がカインたちに注目していた。