カタブツ竜王の過保護な求婚
「これは……こ、この騒ぎに驚いた侍女がすぐに逃げられるようにと支度したものですわ」
カミーラはあくまでもしらを切り、自分を守ろうとしている。
その態度はレイナの動かなくなっていた頭を怒りで動き始めた。
「カミーラ様は、あなたのために働いたものたちを置き去りにするおつもりですか?」
「な、何を……」
「モレト男爵夫人を――本当の名前は知りませんが、あの方を引き入れたのはカミーラ様でしょう? あの方にユストリスの秘宝のことを教えたのもあなたですね?」
「わ、私はそんな人知らないわ! でたらめをおっしゃらないでください!」
「ですがわたしは見ました! カミーラ様が以前、夫人と一緒に話しているところを!」
「そんな不確かな情報はあてにならないわ! ちゃんとした証拠はあるんですか⁉」
「証拠……」
つい感情に任せて訴えてしまったが、ちゃんとした証拠はない。
返答に詰まるレイナを見て、カミーラは勝ち誇った表情になった。
「確かに、証拠がなければ裁くこともできないな」
ため息交じりに呟いたカインの言葉に、レイナは青ざめた。