カタブツ竜王の過保護な求婚
それは婚礼の時のような形式的なものではない、心の通った本物の、初めての口づけ。
心臓が痛いくらいの速さで打ち始める。どくどくと耳の奥がうるさい。
やっぱり自分は眠ってしまって、これは夢なのだと、そうに違いないと納得しかけたレイナから、カインがぱっと離れる。
「す、すまない!」
「え……」
なぜ謝るのだろうか、雰囲気に流されたものの、相手が自分で――レイナであることに気付いて離れたのだろうか。
悪いほうへと考えてしまうレイナから隠れるようにカインは両手で顔を覆った。
「こんな……あなたの意思を無視して口づけをするなんて最低だ」
「意思……」
どうやらカインはレイナのことを気遣っての行動だったようだ。
顔を隠していてもその耳は赤い。
今までカインに好かれたい。と思ってばかりいたが、自分の気持ちを伝えたことはなかった。
レイナはいつも相手からの愛情ばかりを求めるだけで、拒絶され傷つくことを恐れて逃げていたのだ。
傷つくのは怖い。
だけどここで逃げてはダメだと、レイナはカインの手にそっと触れ、赤くなった顔を覗き込んだ。
「私は……カイン様が好きです」