カタブツ竜王の過保護な求婚
「――怪我をさせてしまったな」
隣に腰を下ろしたカインは、細い首に巻かれた包帯に触れ、痛ましげに目を細めて囁いた。
「大丈夫です。これはほんのかすり傷ですから……」
夢から醒めたような気分でレイナはどうにか答えた。
「それにこれは私の判断の甘さが招いたことです。もっと早くに陛下にご相談していれば……。そもそもあのとき、夫人について行くべきでは――」
「いいや、それは違う」
カインはレイナ言葉を封じるように人差し指で唇に触れた。
「今回のことは私の――私たちの判断の甘さだ。城内にもぐりこんでいる者たちには気付いていたが、あのような大胆な行動に出るなど考えてもいなかった。今回の件については我々獣人の驕りが招いたことだ」
悔しげに答えたカインは、それからレイナを見て微笑んだ。
「だが私には、頭が良くて、機転が利き、剣まで握れる心優しい妻がいたから助かった。これほど心強いことはないな」
ここまで誰かに褒められたことなどなかったレイナはうろたえた。それがカインなのだから、なおさらだ。