カタブツ竜王の過保護な求婚


 久しぶりにぐっすり眠れた翌朝。
 目を覚ましたレイナは、いつもと変わらない朝の風景に首を傾げた。


(……夢?)


 カインとキスをしたのは――昨夜のことはやはり夢だったのではないかと思えた。
 そこでふと首へ手をやる。


「いたっ」


 ぴりりとした痛みと包帯の感触。間違いない。夢ではなかった。


「アンヌ! ノーラ!」


 喜びのまま慎みを忘れて、レイナは大声で二人を呼んだ。
 詳細は今日話そうと言われたのだから、いつでも会える準備をしておかなければと急ぎベッドから飛び出す。

 昨夜は久しぶりの再会だったというのに、ぼろぼろのドレスに髪の毛だってくしゃくしゃで木の葉までつけていたのだ。
 思い出せば頬が熱くなる。

 わかっていますよとばかりに、アンヌとノーラがメイドたちを従えて寝室に入ってきた。
 そこでレイナはアンヌの姿を見て、今さらながら、昨夜の騒動に付き合わせてしまったことを心配した。
 なんて薄情なのかと反省しながらも問いかける。


「アンヌ、あなたは大丈夫?」

「はい。ご心配いただき、ありがとうございます。ですが、追いかけっこも慣れておりますから」


 ふふふと笑うアンヌは心から楽しそうだった。
 だてにレイナに十年以上も仕えていない。

< 187 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop