カタブツ竜王の過保護な求婚

 ノーラはやれやれと呆れたふうに首を振る。


「ねえ、ラベロはどう?」


 あの時は暗くてよく見えなかったが、おそらく何か所か怪我をしていたように思う。
 顔を曇らせたレイナに、ノーラがさらに呆れた様子で答えた。


「ぴんぴんしておりますよ! 今朝だって、『自分の力量不足を痛感した。不甲斐ない!』と嘆きながら、殿下にご一緒して騎士たちの鍛錬に参加しているんですから!」

「それは、まあ……」


 ラベロらしくて、納得しかけたレイナだったが――。


「まさか殿下も鍛練を?」

「はい、そのように伺っております。今朝は朝食をご一緒になさりたいそうですので、レイナ様がお目覚めになられたらお知らせするようにと。今の時間でしたら、おそらく執務室にいらっしゃると思いますので、そちらに使いを出しました」


 うなずくアンヌの話を聞いて、レイナは青ざめた。
 右手の怪我も気になるが、今の時刻も気になる。
 窓の外では暖かな日射しの下、小鳥たちが楽しそうに歌っていた。


「私、すごく寝坊してしまったんじゃ……」


「まだそれほどの時刻ではありませんわ。それに、昨夜は大変な目に遭われたのですもの。ぐっすりお休みになられたようで、よろしゅうございました」

「そんなの、アンヌだってラベロだって、みんな一緒よ……」


 目に布を当てたまま、しょんぼりと言うレイナに、首の包帯を取り変えようとしていたアンヌはその手を止めた。


「――実はわたくし、今まで内緒にしておりましたが……」

「……なに?」


 突然の話題転換に驚き、レイナは布を取ってすぐ側に立つアンヌを見た。
 その真剣な表情に、何かよくないことなのかと身構える。

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