カタブツ竜王の過保護な求婚
レグルたち若手がどれだけ反対しても聞き入れてもらえず、結局はあっけなく敗戦。
フロメシアの負った痛手は大きかったが、一つだけ幸いなことに老害でしかなかった首脳陣を父王とともに政治から排斥できたのだ。
そこから始まったユストリス王国側との交渉は予想外にも順調に進んだ。
当然ながら父王たちのように獣人の知能が低いなどとは全く思ってもいなかったが、まさかこれほど敗戦国に温情を示してくれるとは思ってもいなかった。
ただでさえ国庫が困窮しているフロメシアにとって賠償金は大きな負担となる。
それでも国土やこれ以上の民の命を失わずにすむのなら安いものだと、レグルは条件に応じた。
だが父王であるラクスが勝手に交渉し、それにユストリス側が応じたのは誤算だった。
とはいえ、賠償金減額と我儘なルルベラの引き取り手が見つかったことに安堵したのは事実だったのだが――。
(ルルベラがレイナにこの縁談を押し付けることは予想すべきだったな……)
レイナからの手紙には、今回の縁談はぜひ自分が受けたい、とあったのだ。
それがレイナ自身の希望でないことは子どもでもわかる。
まだ内密であるはずの縁談を知っていたこともそうだが、自分へ持ち掛けられてもいない――ましてやルルベラへの縁談をレイナが望むはずはなかった。
ルルベラを咎めようとして、レグルはふと考えを変えた。
これはレイナにとってはもってこいの話――縁談ではないのか、と。
交渉の席での獣人たちが聡明であることはすぐにわかった。――抜け目がないほどに。